知識と知恵 ：

見守るという事で、

自分の患者さんの話ですが

障害のあるお子さんをお持ちの方で、

知的な障害もあり、

何かを教えるという事に大変な苦労をされたそうです。

時にはまわりが心配するほどに厳しく、

一つの事ができるまで、何度でも、何時間でも待って
とにかくずっと見守っていたそうです。


その結果、

お子さんは

知識的なＩＱは、

回復しないながら、

生き抜く知恵と

自分で考える力を手に入れて

ある瞬間から爆発的に

機能を取り戻していったそうです。



あの時、何でもしてやらずに、

じっと我慢して出来るまで待ってきて良かったとおっしゃっていましたが、

これはそう簡単に出来る事ではないと思います。



そこで、ふと思ったのは、

『見返りを求めず育てると知恵がつく』


という事です。


何でも与えてしまい、知識や物だけをたくさん持っても

それを使う事ができない。
現代の子供たちは健常であってもそういう子が多いように思います。

そこには社会に対応する知恵がかけているように思うのです。



無農薬の野菜を作る時も、
その大半は、

土と根っこを育てる事に時間を使います。

そして土や根はパッと見ては変化がわからないですよね。

知識はすぐに答え合わせができますが、

知恵というものは獲得するまで見えて来ない。


治療においても、

すぐに答えを押しつけてしまわずに、

患者さんと一緒に

自身の身体を考えていく。


これはまったく、

大変な作業で、

お互いいつも骨が折れますが、

そうやって得た、

身体の知恵というものは、
驚くほど見事に

実りをもたらすものです。


わからないけども一緒に考えていこう、

という余白のある医学をやっていて良かったなぁ

と思う瞬間ですよね。